ウィンドウズ開発統括部

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4月 2006 Entries


及川です。

今日(もう昨日ですが)は、お台場にて Windows Vista Beta2 セミナーを開催させていただきました。ご参加いただきました方、ご多忙の中、まことにありがとうございました。今日お伝えした内容が皆様の Windows Vista の評価、Windows Vista 向けの製品の開発、Windows Vista の社内展開に少しでも役立てていただけるようであれば幸いです。

私もゼネラルセッションで WinFX についてお話させていただきました。恥ずかしながら、当日のデモ環境の確認が甘かったため、皆様には大変見づらい部分もあったかと思います。申し訳ありません。前日にはきちんと画面の確認もできていたのですが、言い訳にしかなりませんね。本当に申し訳ありません。

ブレークアウトセッションでは、セッション終了後にスピーカーと聴講されていた方との間で熱い質疑応答があったセッションも多かったようで、開催したわれわれにもとても刺激の多い一日でした。

今回のセミナーを、また新たなきっかけとして Windows Vista の評価や対応をさらに進めていただけるようにお願いします。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月29日 1:38


及川です。

ニュースサイトなどで報道されているように、IE7 のベータ2がリリースされました。今回は英語版をまずリリースいたしましたが、日本語版も近日中にリリースいたします。

IE7 ベータ2は Windows XP SP2 (x86 & x64), Windows Server 2003 SP1 (x86, x64 & ia64) に対応しております。詳しくは日本語版がリリースされた際に、また紹介させていただきますが、ベータ2での変更点や注意点などについては、リリースノート(英語)に記載させていただいております。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月26日 0:00


及川です。

SSL での AES サポートについて質問を受けました。

対外的に現時点で言えることを探してみたのですが、なんと (当時) Security VP??の Mike Nash が Slashdot で回答しているのを見つけました。こちら(英語)です。

ここの質問 10) にそのものずばり「なぜ、SSL で AES をサポートしていないのか」というものがあります。Mike Nash からの回答にも書かれているとおり、Windows XP では残念ながら AES の FIPS での認定が Windows XP の RTM より後であったため、AES をサポートすることができませんでした。

Windows では認証や暗号は CAPI や SSP で実装し、アプリケーションやサービスはそれらを利用するようになっています。今回、Windows Vista では CNG (Crypto Next Generation) という仕組みを新たに導入し、最新の暗号方式などに対応できるようになっています。

CNG については、TechNet の First Look: New Security Features in Windows Vista の Cryptography というセクションで紹介されています。英語で恐縮ですが、多分しばらくしたら日本語も用意されるのではないかと思います。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月24日 23:22


及川です。

Web や新聞などでも報道されているように、昨日、都内某所で Bill Gates の記者発表会がありました。

Bill Gates の記者発表会の後、Windows Vista の記者説明会もあり、その質疑応答の際に立ち会ってくれと言われていたので、私と私のグループのプログラムマネージャと2名で参加しました。

説明会は盛況で、どのくらいの人が参加されていたでしょうか? バードウォッチとかの趣味はあいにく持ち合わせていないので、ずばり何名参加と言うことさえできません(ごめんなさい)。あまりにも漠然とした表現で申し訳ないのですが、数百人は参加されていたかと思います。

Windows NT 4.0 Terminal Server Edition や Windows 2000、Windows Server 2003 と記者発表会には、開発側から参加させてもらっていましたので、こういう場は慣れているつもりでしたが、それでも、やはり久しぶりのクライアント OS の説明会。心地よい緊張感があり、良いものです。質疑応答は主に、マーケティング担当者が対応していましたので、私たちはそのサポートに回りました。厳しい質問される方、技術的に歯ごたえのある質問をされる方、サービスを含めマイクロソフトの Windows Vista に向ける対応を質問される方など、いろいろな方がいらっしゃいました。ですが、共通するのは、マイクロソフトおよび Windows の今後に対する興味の高さです。

これらの期待にお応えできるように、気を引き締めて、RTM までの開発作業を続けていきたいと思います。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月22日 23:17


及川です。

Windows Network Developer Platform チームのブログで紹介されていますが、IE7 および Windows Vista の WinInet では TLS が既定で有効となります。

ご存知のように、TLS や SSL はクライアントとサーバーの認証とデータ暗号化を行い、データの整合性を確認するプロトコルです。IE6 では SSL v2 と v3 は既定で有効でしたが、TLS はインターネットオプションで既定の設定を変更する必要がありました。IE7 では SSL v3 と TLS が既定で有効となり、逆に SSL v2 は既定では無効になっています。

SSL v2 でサイトを運営されている方は IE7 および Windows Vista のリリースまでに、SSL v3 もしくは TLS への移行をお済ませください。

詳しくは、Windows Network Developer Platform チームのブログをご覧下さい。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月20日 23:11


及川です。

今日はアドホックモードのお話をさせていただきたいと思います。

アドホックモードとはアクセスポイントを必要とせずに、端末間で通信を行うモードのことを言います。IEEE 802.11 では IBBS (Independent Basic Service Set) と呼ばれているものです。なお、通常のアクセスポイントを介した利用はインフラストラクチャモード(IEEE の正式用語では BSS)となります。

このワイヤレス LAN のアドホックモード、Windows でも Windows XP でワイヤレス LAN 機能が標準装備されて以来、利用できるようになっています。たとえば、会議室やホテルのロビーなど、アクセスポイントが用意できなかったり、アクセスポイントがあったとしても自分たちが利用できないような際(WEP や WPA の設定を知らないというような場合ですね)に、アドホックモードを利用して、ファイル交換などを行うことができます。

しかし、Windows XP ではこのアドホックモード、どのくらいの人が使っていたでしょうか? アドホックモードでワイヤレス LAN の通信を確立したとしても、それで確定するのは、802.11 のアソシエーションに過ぎず、上位レイヤである IP の通信が可能になることではありません。IP を利用するためには、少なくとも IP アドレスが割り当てられる必要があります。アクセスポイントも無いくらいですので、当然 DHCP サーバーが設置されていることも期待できません。

そこで利用されるのが、APIPA (Automatic Private IP Addressing) もしくは AutoIP と呼ばれる機能です。APIPA が利用できる場合、ホストは 169.254.0.0/16 の中でランダムに利用できるアドレスを自分に割り当てます。この APIPA ですが、IETF の ZEROCONF WG で議論されてきましたが、昨年に RFC 化されています(RFC 3927 Dynamic Configuration of IPv4 Link-Local Addresses)。しかし、残念ながら、この APIPA、Windows 上で利用するには、DHCP のタイムアウトを待つために標準では 63 秒ほどアドレスが割り当てられるまでかかります。また、アプリケーションとして APIPA に対応したものも残念ながら、ほとんど用意されていませんでした。

しかし、Windows Vista では、このアドホック通信が1つの有力なシナリオとして考えられています。現在、Windows Collaboration と呼ばれているアプリケーションが Windows Vista では提供される予定ですが、これは複数の PC 間で画面を共有したり、スライドショーを行ったり、ファイルを共有したりするアプリケーションです。この Windows Collaboration は People Near Me と呼ばれる機能を用いて、近隣の PC 間の接続を行っているのですが、ここで想定される利用形態としてアドホック通信があります。

People Near Me では IPv4 の APIPA に代わって、IPv6 のリンクローカルアドレスを使うことを想定しています。したがって、Windows の APIPA が抱えていたタイムアウトまで長時間待たなければいけないという制限はなくなります。また、アプリケーションも、この Windows Collaboration のような魅力的なアプリケーションがマイクロソフトのみならず、パートナーの方々からもリリースされることが期待されます。

このように、ワイヤレス LAN のアドホックモードは Windows Vista では今以上に使われることが期待されているのです。

一方、ワイヤレス LAN のアドホックモードの利用に対する日本における懸念点もあります。ご存知の方も多いと思いますが、802.11a、すなわち 5 GHz 帯ワイヤレス LAN の周波数帯域が変更されました。この変更は基本的に諸外国と同一の周波数帯域を使えるようにするということで、グローバル化の波を考えると喜ばしいことなのですが、一方で、新たに追加されたチャネルではアドホックモードの利用は禁止されています。したがって、802.11a の場合、利用者の方がご自身で利用するチャネルを適切に設定しないと、アドホックモードは利用できないのです。Windows 自身はワイヤレス LAN のチャネル変更は標準ではサポートしていませんので、デバイスごとに依存した操作となり、一般の利用者の方には非常に敷居の高い操作となっています。また、ワイヤレス LAN 機器の中にはアドホックモードをサポートしないものもいくつかあるようです。これもまた、アドホックモード普及の阻害要因となるでしょう。

以上のように、いくつか懸念材料はありますが、携帯ゲーム機の世界では、ワイヤレス LAN のアドホックモードを使った新しいゲームが登場したように、PC の世界でも、従来のワイヤレス LAN とは違う使い方が広まるのではないかと期待しています。

参考資料: 「5 GHz 帯無線 LAN の周波数変更」に関するガイドライン制定について?(← JEITA で作成されたガイドラインです。私も委員として参加しました)

P.S. アドホックネットワークと言った場合、IP のレベルで、中継局の無い状態で経路情報を交換することを想定したMANET (Mobile Ad hoc Network) もあります。これは、たとえば、アクセスポイントの無い状況で、直接電波が届かないような環境でも、ほかの端末を経由してパケットを交換するようなことを実現するものです。今回、お話したアドホックモードは、そこまでの話ではなく、802.11 レベルでアクセスポイントが不在の環境で通信するための話です。

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コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月19日 7:40


及川です。

ご存知のとおり、Windows Vista は IPv6 に完全準拠しています。ここで言う完全準拠とは、プロトコルが標準で有効であり、すべてのネットワーク機能を持つコンポーネントが IPv6 にも対応していることを指します。Widows Vista の IPv6 対応については、今まで、このブログでは細切れにしか説明していないので、今度、きちんと書く予定です。

一方、現在の日本の IPv6 の普及度を計測する試みとして、総務省から委託を受け、インターネット協会が行った IPv6 普及度調査があります。その最新結果がインテックネットコアさんのサイトにあがっていました。

これを見ると、

  1. アドレスの割り当てブロック数はだいぶ前に米国に抜かれたが、2005 年にドイツにも抜かれ、現在3位。
  2. IPv6 の経路やトラフィックはまだ多くなっていない。
  3. DNS サーバーの対応は順調に進んでいる。

ことがわかります。Windows Vista の企業向けリリースは今秋、一般市場向けリリースは来春となりますが、それにより、IPv6 の普及度がどのように変化するのか大変興味あります。

また、逆に言うと、日本ですでに開始されている IPv6 サービス上で Windows Vista が正しく動作するかを検証するのも私たちの役目となります。もちろん、これには日本でサービスを展開されている事業者の方やネットワーク機器ベンダーの方などとの協力が欠かせません。

Windows Vista がリリースされた後にあわてることの無いように、適切に検証作業を進めていきたいと思います。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月18日 8:05


及川です。

本人の名誉のために、間柄については詳しく触れませんが、知人から PC の調子が悪いので、見て欲しいと言われ、某社の PC が送られてきました。

開発・販売元である某社に一度送られたようで、その PC の初期出荷時の状況に戻っています。とりあえず、アンチウィルスソフトを導入し、更新プログラムをインストールしなければいけません。更新プログラムはかなりの数があたっていない状態だと想像できるので、まずはネットワークに接続しない状態で、Windows を起動し、Windows ファイアウォールが有効になっていることを確認。また、念のため、不審なプロセスが動作していないことも確認します。

ファイアウォールも問題なく、特に不審な点もなかったので、アンチウィルスソフトを導入しました。本当は、更新プログラムを導入してからインターネットに接続したいのですが、アンチウィルスソフトのパターンファイルを更新する必要があるため、この段階で1度インターネットにも接続します。そして、最後にWindows Update にアクセスし、たまりにたまった更新プログラムを導入。ほかにもさまざまな設定が誤っていたので、それらを修正し、完了しました。

Windows Update で更新プログラムをインストールしたりする際に、IE を立ち上げたのですが、この知人の IE は左ペインで履歴を表示するような設定になっています。ふと、何気なく見ると、そこには怪しげなアダルトサイトと思われるサイトを訪れた後が…。アンチウィルスソフトも入れずに、更新プログラムもインストールしていない状態で、こんなところにアクセスして、良く無事で入れたなと思うと同時に、本人の意外な一面も垣間見えてしまいました。普段は非常にまじめそうに見える人なのですが…。

IE7 はこんな知人のための機能が用意してあります。現在の IE6 でもブラウザの履歴や一時ファイルなどを個別に削除することはできるのですが、IE7 ではそれらを一括して削除することができるのです。

以下がその画面です(クラッシック表示です)。

いや、別にアダルトサイトにアクセスした足跡を消すための機能ではないですが、この機能を使えば、知人も恥ずかしい思いをせずに済んだことでしょう。

まじめに解説すると、もちろん、他人に PC を渡さなければいけない、今回のようなケースでも使えますが、インターネットカフェなどの公共の場所に設置されている PC でインターネットにアクセスした際、自分のアクセスした痕跡はできる限り消したいということも多いでしょう。IE7 のこの新機能はそのような場合にも一発で削除することができます。小さな改善ですが、これだけでもかなりのセキュリティ向上になると思います。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月16日 23:30


及川です。

偉人伝シリーズではありませんが、Gordon Bell の今を紹介しましたので、今回は Dave Cutler の紹介をさせていただきます。

Dave Cutler は Windows NT の最初のバージョンの開発責任者として知られていますが、Gordon Bell と同様、DEC 出身で、VAX というベストセラーとなったミニコンピュータの OS である VMS の開発責任者でもありました。

DEC では VMS の開発後、新しいプロセッサーと OS の開発をするために、DEC 本社のあったマサチューセッツから西海岸ワシントン州に移り、DECwest オフィスを立ち上げます。しかし、この新プロセッサーと新 OS の開発プロジェクトは 1988 年に DEC 上層部の判断により、日の目を見ることなく、キャンセルされます。そこで、彼は部下とともにマイクロソフトに移ったのですが、そこで開発されたのが Windows NT です。

このあたりの話は、「闘うプログラマー」(G. Pascal Zachary 著、山岡 洋一訳 日経 BP 出版センター)に詳しく書かれているのですが、この本、今では古本屋などでないと入手は難しくなってしまっているようです。もし機会があったら、是非読んでいただきたいと思います。

ところで、実は、私は短い期間ですが、この DECwest で勤務したことがあります。Windows NT 3.1 の開発のころの話なので、もう10 年以上昔のことになります。すでに Dave Cutler はマイクロソフトに移った後でしたが、彼の元部下でマイクロソフトには移らなかったエンジニアがまだ何人も残っていて、彼らから Dave Cutler のさまざまな伝説を聞くことができました(残念ながら、オフレコで聞いたので、ここでは書けません)。

DECwest のオフィスで面白かったのは、ミーティングルームです。ミーティングルームにはそれぞれ名前がつけられているのですが、PRISM や MICA という部屋がありました。これらは、Dave Cutler 率いるチームが開発していた新しいプロセッサーと新しい OS の開発コード名です。何がおもしろいんだと言われるかもしれませんが、開発コード名に凝ったり、それをミーティングルームの名前にしたりというような遊びはエンジニアには欠かせないものです。伝説にさえなっている Dave Cutler のそのような遊び心をこのミーティングルームの名前から垣間見ることができます。

この DECwest、今でもワシントン州ベルビューにあります。シアトルタコマ空港からフリーウェイでマイクロソフトの本社に行く途中、フリーウェイを降りる直前、右手側に見えるところにあります。オフィスのロゴは、しばらく前にコンパックさんのものに代わり、今はもちろんヒューレットパッカードさんのものに代わっています。今でも PRISM や MICA というミーティングルームは残っているのでしょうか。

ところで、Dave Cutler ですが、今でも現役のエンジニアです。マイクロソフトのシニア ディスティングイッシュド エンジニアというポジションについています。シニア ディスティングッシュド エンジニア…、カタカナで書くと何書いてあるんだか、わかりませんね。Senior Distinguished Engineer です。最近は主に 64 ビットの開発にあたっています。

動く Dave Cutler を見てみたいという方は AMD さんのサイトにあるビデオをご覧ください。私の知る限り、インターネット上で動く Cutler を見れるのは、これだけです。レアものかもしれません ;-)

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月14日 23:54


及川です。

「ウェブ進化論」の著者の梅田氏の前著、「シリコンバレーは私をどう変えたか -起業の聖地での知的格闘記-」(梅田望夫著 新潮社)を以前読んだことがあったのですが、「ウェブ進化論」がベストセラーになっていることもあって、再度読み直してみました。

この本は梅田氏がシリコンバレーで生活する中で感じたアメリカのベンチャーの強みや日本企業への期待などが書かれているものです。出版されたのがしばらく前(2001年)なので、最新情報を知ることができるわけではないですが、逆に今から見ると、当時の状況が思い出され、それはまたそれで面白いです。

この本では、マイクロソフトと司法省の裁判について1章を割かれているなど、マイクロソフト社員としてはコメントしずらい部分もあります。ただ、私個人としては梅田氏がマイクロソフト研究所の Gordon Bell とメンター関係にあるというところに興味を持ちました。

Gordon Bell はご存知の方も多いと思いますが、DEC (Digital Equipment Corporation) の PDP や VAX の設計を行うなど、業界でも著名なコンピュータアーキテクトの1人で、現在ではコンピュータアーキテクチャにおけるノーベル賞とも言われる Gordon Bell の名前を冠した賞もあるほどです。私も DEC に勤務していたことがあるのですが、Gordon Bell は DEC 社員の中でも伝説上の人物の1名でした。

さて、本では次のように Gordon Bell との関係が紹介されています。

何か相談ごとがあると、私はロスアルト市のゴードンの家を訪ねる。(中略)広い壁には、彼が設計したコンピュータの心臓部、半導体がぎっしりと詰め込まれたボードが立派な額に入れて飾られ、その横には、シャガールやピカソのリトグラフが無造作に掛けられている。打ち合わせに使う長四角のダイニング・テーブルの真ん中には、使い古しの真空管が三つ、オブジェとして置かれている。 

ゴードン・ベル。コンピュータ産業育ての親の一人。七0年代から八〇年代に一世を風靡した PDP/VAX シリーズ(DEC 社)というコンピュータを設計したアーキテクト(建築家の意)として有名である。DEC の技術担当副社長、カーネギーメロン大学コンピュータ学科教授を経て、米国政府のコンピュータ研究開発予算の配分を任されていた時期もある。昨年(一九九五年)ビル・ゲイツに請われて、マイクロソフトがサンフランシスコに新設する研究所の設立を任された。

Gordon Bell に気軽に相談できる関係というのは、日本人でもそう多くないのではないかと思います。

さて、Gordon Bell ですが、現在、何をしているかというと、マイライフビッツ(My Life Bits)というプロジェクトに取り組んでいます。日本のメディアでも取り上げられたことがありますが、個人の生活、いや人生すべてと言っても良いと思うのですが、そのようなすべての情報をデジタルデータとして保存するというプロジェクトです。プロジェクトのページにある資料をご覧になるとわかりますが、膨大なデータをすべてデジタルスキャンし、デジタル情報として記録し、データベースに保管しています。まだ、あくまでも研究段階ですが、将来的にはデスクトップや Web の検索技術や WinFS のようなメタデータを持つファイルシステムなどとあわさって、プラットフォームに搭載されてくると思います。

一方、日経新聞で一昨日から「ネットと文明 第4部 常識オセロ」という連載が始まりましたが、その中で、このように情報をすべて「記録する」ことの明の部分と暗の部分について紹介しています。幼稚園の卒園式でデジタルカメラなどですべて記録しようとする親を紹介し、「記録はあっても記憶がない」状態になりうる危険性を指摘しています。

半面、知識を習得し心に刻むことが忘れられ「記録はあっても記憶がない」ことにもなりかねない。記憶し学び、考え感動する。そんなヒトの営みとどう向き合うか。

このように、「記録」と「記憶」をどのように結びつけるのかは、このプロジェクトに限らず、情報技術の今後の課題でしょう。1エンジニアとしても、考えて続けていきたいと思います。Gordon Bell の今後にも期待です。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月13日 8:05


及川です。

ABテストというのをご存知でしょうか? 私は「アマゾンの秘密──世界最大のネット書店はいかに日本で成功したか」(松本 晃一著 ダイヤモンド社)から知ったのですが、「コンテンツの効果を評価するために、別々のコンテンツを一定の確率で実際のウェブ上でエンドユーザーに提示し、その反応を確かめるという手法」(「アマゾンの秘密」から引用)だそうです。

アマゾンさんでは、このABテストの手法を使って、カスタマーレビューのあるページとないページを一定期間、実際にユーザーに提示することにより、カスタマーレビューの効果を計ったそうです。

Web のアプリケーションでは、このように実際のユーザーの行動特性というものを把握することができます。設計されたサイトの状態遷移の通りにユーザーが移動しているか、どのようなページを見たユーザーが最終的に購買行動をとっているかなどを把握することにより、よりユーザーに使いやすいように、より商品の売り上げにつながるように、サイトの設計を変更することができるのでしょう。

Windows をはじめとするプラットフォームソフトウェアにおいても、ユーザーがどのソフトウェアをどのように使っているかを把握することができれば、製品の改良に利用することができます。機能によっては、多くのユーザーが同じようにつまづいてしまう部分があるかもしれません。また、まったくユーザーに使われていない機能もあるかもしれません。このようなものを把握するために、開発グループは協力いただけるお客様にお願いして、ユーザービリティテストというものを行っています。

ただ、Web アプリケーションのようにソフトウェア的にユーザーの操作を把握できるような機能を搭載するほうが、多くのユーザーの方々による実際の使われ方を知るには効果的です。しかし、ユーザーの方の同意無しに、そのようなことを安易に行うことはできません。製品の提供元だからと言って、ユーザーの方々に断りも無く行ってしまった場合には、キーロガーやスパイウェアのようなものと言われてしまうでしょう。

そのため、マイクロソフトでは、ユーザーの方に同意をいただいた上で、情報を提供いただくことを行っています。これは、カスタマーエクスペリエンス向上プログラム(CEIP)という名前で実装されているものです。すでにいくつかのマイクロソフト製品に搭載されていますので、お気づきの方もいらっしゃるかもしれません。

Windows では、Windows がクラッシュした際に利用されるオンラインクラッシュダンプ解析サービス(OCA)が Windows 2000 から、またアプリケーションが致命的なエラーを起こした際に利用される Windows エラー報告(WER)が Windows XP および Windows Server 2003から提供されていました。これに加えて、カスタマーエクスペリエンス向上プログラムも Windows XP Media Center Edition などから提供されるようになっています。

プライバシーなどを心配される方が多いと思いますので、繰り返し強調させていただきますが、マイクロソフトはユーザーの方の同意無しに、情報は取得しませんし、また取得させていただく情報もここに書かれている内容に沿って適切に扱われます。

多くの方にカスタマーエクスペリエンス向上プログラムにご協力いただくことで、製品の品質および機能を向上させることができます。もし皆様も、このカスタマーエクスペリエンス向上プログラムという機能を見かけたら、製品をより良いものにするために協力いただけるようにお願いいたします。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月12日 0:15


及川です。

以前ポストしたように、マイクロソフトの製品開発で重要な役割を演じるのが、プログラムマネージャです。ただ、友人からは、「やっぱり良くわからん」と言われてしまっていますので、もう少し説明を加えてみようと思います。

プログラムマネージャはソフトウェアデザインエンジニアやソフトウェアデザインエンジニア/テストなどから構成されるプロジェクトチームを管理することが要求されます。ではプロジェクトマネージャと呼べば良いではないかと思われるのかもしれませんが、それとも少し違います。

プロジェクトマネージャとはe-Wordsによると、次のように説明されています(完全な説明はこちらを参照)。

企業の方針を理解した上で実現可能なプロジェクトを計画し、開発から運用・評価までを適切に行なうため、資源の制約を考慮したうえで効率的に人材・資材・予算・品質などを管理し、正確な運用実績の分析を行なう能力が要求される。(e-Wordsより引用)

プログラムマネージャの1つの役割として確かにこのようなものはあるのですが、管理者という側面よりも、もう少しエンジニアリング色の強いものです。また、プログラムマネージャと言っても、ほとんどソフトウェアデザインエンジニアに近いこと(コードのレビューをしたり、詳細な仕様書を作成していたりします)をしている人間もいれば、お客様との対応に主な時間を費やしている人間もいます。つまり、製品をリリースするための「のり」のような仕事をしているのがプログラムマネージャと呼ばれるエンジニア達なのです。

インターネットマガジン2006年5月号(なんと、終号です (T_T))に、元マイクロソフト株式会社最高技術責任者の古川氏が巻頭インタビューで登場されていますが、そこでプログラムマネージャについて良い説明をされています。

米国ではプログラムマネージャーという立場の人間がいて、突出したエンジニアたちをなだめすかしながら、納入する期限やサイズ、価格といった全体のバランスをとりつつ、テストや市場調査をしながら商品化していきます。そのために必要な能力はプログラマーの能力とはまた異なります。米国であれば、技術者のほかにプロデュース能力に長けた人がベンチャーキャピタルから投資を引き出してきて、荒削りなアイデアをうまく磨いて商品として成り立たせます。(インターネットマガジン2006年5月号より引用)

そうなんです。プロデューサーなんです。プログラムマネージャは製品という作品をチームで作り上げるためのプロデューサーとしての役割が求められるものなのです。必要な作業をチームメンバーに割り当てながら、誰にも担当させられないものは自分でこなしていく。そんなことが求められているのです。

少しはプログラムマネージャについて理解を深めていただけたでしょうか。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月10日 23:44


及川です。

先ほどテレビで超常現象を取り上げていたのですが、その中で幽体離脱についての実験が行われていたました。くだらないと思われるかもしれないのですが、実は、こういう類の番組が大好きで、「と学会」の本などもほとんど読んでいます(ということからも、お分かりだと思いますが、超常現象を盲目的に信じているわけではありません)。

この幽体離脱、以前いろいろと調べたことがあります。立花隆氏の臨死体験の本などでもいくつか事例が紹介されていますが、日本の情報だけでは飽き足らず、海外の有名サイトを片っ端から見たものです。興味が出た方のためにお教えしますと、幽体離脱は英語では Out-of-body Experience と呼ばれています。略して OOBE です。ん? どこかで聞いたな。そうです。Windows にも OOBE という機能があります(強引でしょうか? 強引ですね)。

Windows の OOBE は Out-of-box Experience の略で、言葉通りに説明すると、「箱から出した状態の経験」ということになります。つまり、お客様に Windows をご購入いただいて、インストールしていただいた状態で、すぐに使っていただけるように、必要な作業をできるだけ軽減しようというコンセプトです。OOBE はインストール後に起動されるウィザードのことを狭義には指しますが、広義にはお客様にすぐに使っていただけるようにという各コンポーネント特有の機能も意味します。

この Windows の OOBE ですが、ライセンス認証手続き(Windows Product Activation)やユーザー登録が行われます。SP2 では Windows セキュリティセンターの設定なども、この OOBE の一貫となります。プロセスとして MSOOBE というのがあるのですが、これはその中でもライセンス認証手続きをつかさどるプロセスとなります。ですので、マイクロソフトの技術情報を検索していただくとわかりますが、ライセンス認証に関しての処理が必要になった場合には、この MSOOBE.EXE を手動で実行していただくことになります。

ベータプログラムに参加していただいている方や CTP を MSDN などで入手された方はご存知だと思いますが、Windows Vista では、セットアップやこの OOBE が大幅に変更されています。できるだけお客様の手を煩わせないように、ですが、必要最低限の作業はしっかりと行っていただけるように、現在デザインの改良の最中です。最終的は、どのような姿になるのか、是非期待していただきたいと思います。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月9日 22:57


及川です。

Windows Vista では RSS が標準サポートされていることはこのブログでも何度か紹介していると思いますが、RSS 標準サポートとはどういう意味かお分かりでしょうか? 現在でも RSS アグリゲーター/リーダーは Windows 上でもいくつも存在しています。しかし、現在のようにアプリケーションで RSS をサポートしている場合、ある RSS アプリケーションでフィードを受信するように設定したとしても、ほかの RSS を利用するアプリケーションにはそのフィード設定は共有されません。RSS が1つのアプリケーションだけで利用されているのならば、これは大きな問題にはならないかもしれませんが、RSS が単純にブログの最新投稿を受信するというだけの役割を大きく超え、Web 技術を用いたカレンダーやスケジュールなどの情報共有、Live Clipboard のような Web 間もしくは Web と PC 間の(マイクロフォーマットを利用した)データの交換などに用いられるようになると、プラットフォームとして RSS をサポートする必要が生じます。Windows Vista の RSS サポートの背景にはこのような理由があります。

とは言え、Web ブラウザである IE7 が当面はもっとも RSS の恩恵を受けるアプリケーションでしょう。

サイドバーでも RSS によりフィードを受けるガジェットがありますが、これもフィードを受けるには IE7 を利用することが一般的です。

IE7 による RSS の自動検出

IE7 には次に示すように、フィードボタンというものが用意されており、Web ページに RSS によるフィードが存在すると、自動的にこのフィードボタンが有効になります。

ただし、このフィードボタンが有効になるようにするためには、Web ページ/サイト側で適切な設定がされている必要があります。別の言い方をすると、RSS によるフィードを IE7 が自動検出するためには、適切な Web ページ/サイト設定が必要です。

まずは Web ページ(HTML)に適切な LINK エレメントが必要になります。この eXconn のブログも自動的にこのような HTML を吐くようですので、安心しましたが、次のような記述が HEAD エレメントに必要です。


? http://www.example.com/feedurl.rss
>

または ATOM の場合には次のようなになります。


? http://www.example.com/feedurl.xml
>

フィードのための MIME タイプ

IE7 がフィードのためのリンクをクリックした場合、IE7 はそれが本当にフィードかどうかを確認するために、MIME タイプの確認を行います。つまり、フィードのためのリンクは次の MIME タイプを持つように Web サイトを設定する必要があります。

  • RSS 2.0 (.91 and .92): text/xml (推奨) または application/rss+xml
  • ATOM 1.0: application/atom+xml
  • RSS 1.0: application/xml?または text/xml

以上の設定がされている場合、IE7 により適切にフィードが自動検出されます。有名なブログシステムなどでは、既定の設定でこのような振る舞いをするようになっているようですので、特に新しい作業が発生することは無いと思いますが、IE7 の評価の際には是非、RSS によるフィードが適切に検出されるかも確認してみてください。

詳しくは、IE Team のブログ "Publisher's Guide Update with MIME Detection" をご覧下さい。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月6日 23:01


及川です。

本日は雨の中、よみうりランドで花見をしてきました。ここ1~2週間で一番悪いと思われる天気に、共同主催した Office の開発グループとどちらのせいかで責任の擦り付け合いをするしまつ(冗談です)。天気は悪かったですが、久しぶりに仕事を離れて、いろんな部署の人と話をすることができました。でも、誰も桜を見ていなかったような気も…。私も写真を撮ってくるのを忘れました (^_^);;;;;。

ところで、ほかの誰もブログに書いていないようなので、書かせていただきますが、実は、マイクロソフト プロダクト ディベロップメント リミテッドにいた社員は全員、4月1日よりマイクロソフト ディベロップメント株式会社の社員となることになりました。マイクロソフト ディベロップメント株式会社って、聞いたことないと思われた方、正しいです。今回、新しく設立されたものです。

会社は変わりましたが、業務に変更はありません。これからもよろしくお願いします。

詳しくは今年1月のニュースリリースをご覧ください(↓)。

日本における製品開発の新会社設立
マイクロソフト ディベロップメント株式会社設立

~マイクロソフトプロダクトディベロップメントリミテッドの事業を4月1日付で移管 ~

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月5日 22:26


及川です。

昨日、クリエイティブコモンズのライセンスで提供しているマイクロソフトの技術仕様について紹介しましたが、1つ忘れていることに気づきました。

IE7 で提供される検索機能は複数の検索エンジンを指定できるようになっています。つまり、既定の状態で提供される検索エンジン以外にも追加で検索エンジンを追加できます。さらに、この検索エンジンもいわゆる MSN サーチやグーグルさんのような汎用 Web 検索だけでなく、書籍の検索やブログの検索など分野ごとの検索エンジンも登録できるようになっています。

このように、異なる複数の検索エンジンを登録するために、マイクロソフトはアマゾンさんの子会社である A9.com さんが策定した OpenSearch を共同で拡張しています。今日の検索エンジンは一般には検索結果を HTML で返すことがほとんどであり、そのフォーマットもまちまちです。そのため、ある検索エンジンを用いて、その結果を加工することや、複数の検索エンジンを使い、検索結果を結合することなどが困難です。OpenSearch を用いることで、検索エンジンそれぞれに独自の検索パラメータを適切に引き渡すことや検索結果を統一したフォーマットで入手することができます。

この OpenSearch については OpenSearch 1.1 の仕様書IE チームのブログをご覧ください。

で、昨日、書き忘れたのですが、この OpenSearch の仕様書もクリエイティブコモンズで公開されています。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月4日 23:23


及川です。

本日午後、社内でウィンドウズ開発統括部および関連部署の全体会議があり、そこで私のグループについてのプレゼンテーションを行いました。新しい人もいたので、私のグループの紹介と、ここしばらくの活動などについて説明するようにとの依頼を受けていたのですが、「インターナルだし、普通じゃつまらん」と遊び心が芽生えてきました。そこで、単にいつものようなプレゼンテーションをするのではなく、今回はスタイルを変えてみることにしました。

どのようなスタイルでいくことにしようかと考えたのですが、ちょうど友人が Lawrence Lessig 教授の講演を聴講しており、そのフィードバックを受けたばかりだったので、Lessig 教授のスタイルを真似させていただくことにしました。(Lessig 教授とお聞きになってもご存知ない方が、いらっしゃるかもしれませんが、あのクリエイティブコモンズ プロジェクトを中心となって進めていらっしゃる方です。)

もしかしたら、私がオンラインで拝見したものだけかもしれないのですが、私が見たその Lessig 教授のプレゼンテーションは非常に印象的でした。真っ黒な背景にタイプライターのようなフォントでメッセージを前面に押し出すようなスライド。さらに、スライドを次に進めるのと同時か、それよりも前にスライドの内容についての説明を話し始めるスタイル。1つのスライドにかける時間が平均すると30秒かそれ以下で、私が見たものは30分程度のプレゼンテーションだったのですが、それにもかかわらず100枚を軽く越えるスライドの総量。内容もさることながら、このプレゼンテーションのスタイルにも圧倒されました。

「これだ」と思い、今朝いそいそと、スライドを作り直しました。午後に全体会議が始まり、私の出番は2番目。さっそく、Lessig 教授になりきって、プレゼンテーションを進めました。スライドをさくさくと進めていくことの気持ち良いこと。今度から、ずっとこのスタイルでやろうかと思うほどでした。同僚や部下たちもいつもと違うプレゼンテーションのスタイルに気づいていたようで、終わるなり、早速に声をかけられました。

高橋メソッドですか?」

orz...

「高橋メソッドはおもしろいし、秀逸だと思うんだけど、今回は Lessig 教授なんだよー」と心の中で叫んだ私でした。

クリエイティブコモンズとマイクロソフト

ところで、クリエイティブコモンズ。

マイクロソフトとは無縁の話だと思われているかもしれませんが、そんなことはありません。すでにマイクロソフトが関わった仕様書のいくつかがクリエイティブコモンズに則って公開されています。

Simple List Extensions

まずは、これ。Simple List Extensions (SLE) です。RSS 2.0 への拡張で、いわゆるリスト構造のサポートが行えます。これを使うことにより、リストの中のどのアイテムによってソートでき、またグルーピング可能かを指定することができます。例えば、マイクロソフトのセキュリティ情報を SLE をサポートした RSS でフィードした場合、フィードを受けるアプリケーションは、たとえば脆弱性の「深刻度」や「影響を受けるソフトウェア」でソートしたり、グルーピングしたりすることができます。SLE は Windows Vista の RSS 機能の1つとして実装されています。

SLE 関連情報:

Simple Sharing Extensions for RSS and OPML

まだあります。次は Simple Sharing Extensions (SSE) です。SSE は従来一方向だった RSS のフィードに双方向のサポートを加えます。これを用いることにより、スケジュールやアドレス帳の共有などに RSS や OPML を用いることができるようになります。SSE も Windows Vista に実装されています。

SSE 関連情報:

Live Clipboard

最後に、まだどのようなリリース形態になるかわからないものですが、Ray Ozzie により、O'Reilly さんの Emerging Technology Conference でお披露目した Live Clipboard もクリエイティブコモンズで仕様公開しています。Live Clipbaord は Windows でのクリップボードに相当するものを Web 間もしくは Web と PC 間で実現するものです。詳しくは、以下の Ray Ozzie のブログをご覧ください。特に1つ目のスクリーンキャストを見ていただければ、どのようなものかすぐにお分かりいただけるでしょう。

Live Clipboad は Windows Live での利用が予定されていますが、具体的なスケジュールなどはまだ決まっていません。現在のところ、仕様はバージョン 0.91 となっています。

Live Clipboard 関連情報:

今回は図らずも RSS についての簡単な説明も兼ねることになりましたが、マイクロソフトもクリエイティブコモンズで仕様を公開していることを紹介させていただきました。Windows Vista の RSS サポートについては、また回を改めて紹介させていただきます。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月3日 23:12


及川です。

マイクロソフト以外の方は、Windows Vista のリリースまで、まだ時間があると思われるかもしれませんが、マイクロソフトでは、少なくとも Windows の開発に関連している部署では、リリースは遠い先の話ではありません。

マイクロソフトでは、リリースが近くなると、社員が実際にその製品を使い、さまざまな利用状況において問題が発生しないかを確認します。全社員にリリース前の製品のインストール命令が出され、実際にすべての業務で利用することをインターナルロールアウトと呼びますが、その前にまずはその製品の開発部署が実際の開発に自分たちの開発中の製品を利用します。これをセルフホストと呼びます。

このセルフホスト、Windows NT 3.1 の開発を解説したノンフィクション小説である「闘うプログラマー」(G. Pascal Zachary 著 山岡洋一訳 日経 BP 出版センター)では「ドッグフード」と表現されていることからもわかるように、まだバグの多く残る開発中の製品を業務で利用することになりますので、不安定ですし、使い勝手も落ちます。生産性は、50% は低くなるでしょう(当社比 :-))。

このセルフホスト、Windows Vista に対して、すでにわれわれ開発部署の人間は行っています。

セルフホストと言えば、私は Windows 2000 の開発の終盤でのある出来事を思い出します。Windows 2000 の開発当時、マイクロソフトは単に Windows 2000 のセルフホストだけでなく、Windows 2000 で導入される Active Directory へのドメインの移行およびその Active Directory を使った新しい Exchange Server の導入も進めていました。このため、社内のコミュニケーションの生命線であるメールシステムが必ずしも安定しておらず、時にはメールの配信が遅延したりすることもある状況でした。

そんな時、ある致命的な問題が、Windows 2000 で見つけられました。開発終盤であるため、通常はよほどの問題でないと修正は行えません。その問題を修正するかどうか日本側で関係部署を集め、検討に検討を重ねた結果、修正を依頼することになり、私と同僚で実際の修正コードのコードレビューを行い、修正した特別モジュール(プライベートモジュールと呼びます)を入れて、副作用が発生しないかを確認しました。その後、日本からレッドモンド本社のプロジェクトチームのミーティングに電話で参加し、日本側でのテストで問題ないことを伝えましたが、このプロジェクトチームのミーティング(ウォーミーティングと呼ばれます。War Meetingです)への参加のときには、当時の上司に「発言に気をつけろよ。XXX や YYY なども参加しているぞ。」(XXX や YYY は当時の本社の Windows 開発部署の上層部の人間です)と言われ、ひどく緊張したことを覚えています。

ウォーミーティングでも修正を行うことが許可され、ほっとしていたのですが、ほっとしたのもつかの間、この修正モジュールにより、ある副作用が起きることが本社側で見つけられました。急いで、その副作用を日本側で再現した結果、副作用はある特定のごく限られたケースで発生し、それは既定の設定では起き得ないことなどが確認できました。この結果を米国時間の翌朝のウォーミーティングまでに伝えなければいけません。きちんと伝わらないと、修正コードのチェックインが許可されず、元の問題点が修正できないことになります。

まずはメールでこちら側での確認内容とインパクトは大きくないと判断した理由を伝えます。ですが、Active Directory も Exchange Server も上に書いたように不安定です。メールがきちんと明日の朝までに届く保証はありません。メールを印刷し、FAX して本社の担当に送ります。ただ、FAX でもメールルームから届く時間が何時になるかわかりません。そこで、念には念を入れて、担当者に電話することにしました。ただ、米国時間ではもう夜中。オフィスには当然いません。そこで、担当者のボイスメール(留守電)にメールの内容を読み上げました。

メール、FAX、ボイスメール。この3つのうち果たして、どれがきちんと届いたのかわかりませんが、結果的には無事、翌朝のウォーミーティングで修正コードをそのままチェックインすることが認められ、リリースされた製品では問題を修正することができました。

もう7年も前のこととなりますが、セルフホストというと当時のこの出来事が思い出されます。この話を聞いて、先端の IT 基盤技術を開発する会社でありながらも、ひどくアナログな方法を使っていたのだなぁと思われるかもしれませんが、ここまでして、自分たちで実際に製品を使って、問題点をすべて洗い出している実際例として捕らえていただけると幸いです。

Windows Vista も、実際に自分たちで使用し、皆様にお使いいだくのにふさわしい機能と品質を持つまではリリースはいたしません。マイクロソフトの開発ポリシーをこのセルフホストの考えから理解してもらえればと思います。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時: 2006年4月1日 23:07