ウィンドウズ開発統括部

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及川です。

Windows Vista は製品のプランニングの時期を含めると数年以上前から開始されているプロジェクトですが、そのプランニングや各コンポーネントのデザインには「ペルソナ」と言われる手法が用いられています。

ペルソナとは心理学者ユングが定義した「社会に適応する行動」を意味しますが、製品のデザインにおいては、製品を使うであろう将来のユーザーをできるだけ詳細に思い描いた仮想のユーザーのことを言います。ペルソナは仮想ユーザーではありますが、現実にいるユーザーを代表するものでなければいけません。そのため、フォーカスグループと言われるユーザーインタビューや膨大なマーケットデータなどを元に、ペルソナは作られます。ペルソナはアランクーパー氏が提唱したものであり、多くの会社ですでに用いられていますが、マイクロソフトではこの概念をさらに拡張し、ほかのユーザービリティ手法とともに製品開発に用いています。

Windows のような製品の場合、製品の利用者となるユーザーは1種類ではありません。IT Pro と呼ばれるようなシステム管理者、Information Worker と呼ばれるオフィスでの知的労働者、さらにはコンシューマーユーザーまで複数に分類することができます。実際には、これらの中でさらに、いくつかの層に分類されます。たとえば、IT Pro もヘルプデスクのサポートスタッフから全社の情報システムに対する意思決定を行うような管理職までさまざまな種類のユーザーが存在します。Windows Vista の開発では、考えうる一般的なユーザーをすべてペルソナとして、あたかも実在しているかのように定義することが行われました。

用意されたペルソナは製品の各機能の使われ方を説明する際のシナリオとして用いられます。シナリオはユーザーの利用シーンと言っても良いかと思いますが、具体的にどのような環境や状況で、誰がいつ使うのかを説明したものになります。たとえば、Windows XP の UPnP (Universal Plug and Play) を説明した文書の中に次のような解説があります。

メアリーはベッドにいて寝るところで、明日は土曜です。いつも目覚し時計は朝 7 時に鳴りますが、明日は寝ていたいのです。起こしてはもらいたいのですが、朝 9 時がちょうどいい時間と思えます。そこで彼女は目覚しを朝 7 時でなく 9 時に設定しました。

メアリーの目覚し時計は UPnP 対応なので快適です。彼女の Windows XP® ベースの PC には、目覚し時計から設定された時刻の通知を受け取るスクリプトがあります。スクリプトは設定変更があると、HVAC デバイスのタイマに起床時刻を目覚し時計と同時刻にセットするよう指示します。

さてメアリーの暖房は、彼女がベッドから起きるときに凍えないよう、早い時刻にスイッチが入るでしょう。インテリジェント エアコン (HVAC) システムがあれば、今ある予約機能つき冷暖房機器をはるかに越えた、多数の機能を追加できるはずです。それにはセンサーが人間を検出するシステムや、インターネット経由でリモート制御するシステムが考えられるでしょう。

目覚し時計が彼女のスケジュールにアクセスできれば、もし会議に遅れる時間に起床時刻をセットしても、メアリーに警告できます。いいかえると会議が朝 9 時で目覚しを朝 9 時にセットすると、9 時の会議に間に合うには朝 8 時に起きなければならないと警告できるようになるかもしれません。

シナリオとはこのような文書です。また、この中に出てくるメアリーがペルソナにあたります。

Windows Vista の開発でも、複数のペルソナがあらかじめ用意され、開発者は Windows Vista にて提供したいと考えている機能のシナリオをこれらのペルソナを用いて説明しました。このようにすることによって、開発者の独りよがりな発想を元にした機能がユーザーの最終的な利用シーンを想定することなく実装されていくことを避けることができました。

Windows Vista での新機能は膨大な数になりますし、機能拡張されたものはほぼすべてと言っても過言ではないほどです。ですが、それらすべてのプランニング段階に、このペルソナとシナリオの手法が用いられ、機能追加や拡張の妥当性を検討していたことをご理解いただければ、これほどまでに開発に時間がかかったこともお分かりいただけるのではないかと思います。

最後に、マイクロソフト リサーチから出ているマイクロソフト社内でのペルソナ手法についての論文を紹介しておきますので、興味のある方はご覧いただければと思います。

コミュニティにおけるマイクロソフト社員による発言やコメントは、マイクロソフトの正式な見解またはコメントではありません。
投稿日時 : 2006年3月19日 23:52

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